今日、朝鮮(一々「北」と念を押さない)の「挑発」に対する国連安保理の制裁決議を強化する言説ばかりが往生して日本の安全を脅かしている。今東北アジアで起こっている核戦争準備の動きを食い止めるのには、その近代史における発生の根本原因に立ち返る必要がある。それは、朝鮮戦争における朝鮮と国連と米国との選んだ道の新しい交点として、今日の朝米相互攻撃の論戦の後ろに隠されている「本当の国際安全保障の大問題」をハッキリ認識する必要がある。そうしない限り、問題は金委員長の乱暴な核戦略軍の大展開という形で、彼を止めればよいという形に矮小化されて、その本当の恐ろしさが見えて来ない。朝鮮戦争は、金日正主席によって開始された。しかし、ソ連が中国問題で国連をボイコットして、安保理が米国の完全な支配下にある時期に起こったのには、米国側の巧みな挑発が効を奏した側面がある。そのおかげで、国連軍が米国の指揮のもとで組織されたのだ。国連軍の指揮は、日本占領軍の指揮官マッカーサーが任命された。マッカーサーは、日本軍の降参を招いた核兵器を用いた攻撃によって、一気に朝鮮戦争を終結させようとした。しかし、トルーマン大統領は核戦争が人類の滅亡を招くことを正しく恐れて、彼を解任し、マシユー・リッジウェー将軍が国連軍の指揮官となった。休戦協定は、ソ連の国連代表アダム・マリクの休戦提案に応えたリッジウェー国連軍総司令官が、金日正と彭徳懐に休戦協定を提案、1953年7月27日に調印され、国連軍総司令官アーサー・クラークと中国人民志願軍総司令彭徳懐、朝鮮人民軍総司令官金日成が署名した。その結果、スイス・スエーデン・ポーランド・チェッコスロヴァキアによって構成された中立国監視委員会が、協定の実施を監視する体制が確立され、捕虜交換・38度線と俗称される軍事境界線の設置・朝鮮半島全土への兵員や兵器の流入の禁止が守られるようにした。そのことは今日では、全く忘れ去られている。
その原因となったのは、1957年6月の米国(国連軍)の韓国への核兵器・ミサイル持ち込みを禁止する休戦協定の13節の一方的な廃棄宣言、その後の北侵を目指す米韓合同大演習に対応して朝鮮が2009年に、もはや休戦協定に効力はないとして休戦協定脱退を表明したという、休戦協定が事実上実効性を失ったことにある。その後、韓国側では朝鮮の責任に帰している天安沈没事件、公的にも南北軍事紛争として位置づけられる朝鮮による延坪島砲撃事件などの争乱があった。国連総会では、早くから(1975年)休戦協定を平和条約におきかえて国連軍を解散する決議が採択されている。1996年には国連安保理において議長声明の形で、平和条約が成立するまでの間、休戦協定が十分に順守されるべきことを申し合わせている。その後、休戦協定から平和条約への移行手段として、いわゆる六者会合を重ねることで、米国が朝鮮側からの二国間交渉の提案を無視して来た状態の継続を改善する方向での、第三国あるいは民間レヴェルでの努力が続いている。
これについては、拉致問題の交渉中断状態の克復とともに、朝鮮国内のタカ派・ハト派諸政治勢力のハト派的な合意を進めることを日本が努力を重ねることで、中立監視委員会の機能停止による休戦協定の機能回復を下支えする必要がある。小泉・金正日のピョンヤン協定では、「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際合意を順守すること」が確認され、「核問題及びミサイル問題を安全保障上の諸問題に関して関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性」が確認されている。小泉首相に対して金正日総書記は「ミサイル発射のモラトリウム(一時停止)」の継続を約束し「六か国協議の場でも話合っていく」姿勢を明らかにして、ハッキリと「朝鮮半島の非核化が目標だ」ということを確認した。このように、休戦協定に立ち戻って朝米平和条約への道を準備することについて、日本が調停役を引き受ける道も開かれていた。しかし拉致問題は、帰国した被害者を朝鮮に返す約束を日本が守らず未解決にしたとして平壌合意を無視したまま、これまた日本側にも朝鮮側にもその事実が忘れられている。この問題については金正日総書記もその解決を約束したが、その「解決」が朝鮮国内のタカ派政治勢力の協力を必要としているために、圧力では解決できない、巧妙な交渉を必要としている。これに対して休戦協定の初志に戻ることは、朝鮮国内のタカ派・ハト派の合意が相当程度可能である。なぜなら朝鮮のタカ派もハト派も朝米直接交渉を目指して、核拡散条約を盾とした核特権保有国米国に対して、核を持っても核拡散条約の核非保有国という二流の国家扱いされることに関しての不当性については、完全な見解の一致をみているからだ。
国連安保理では、マッカーサー解任において開いた米国覇権のもとでの核戦略を国際条約に仕立てあげた。それは米ソ両核超大国の核均衡を安定させるために、核保有国が増えないようにするために、核保有国間の軍縮・軍備規制を許しながら、非保有国には絶対に核保有国になることを拒否する、核の保有国と非保有国を分割する不平等な核拡散防止条約を中心にすえた核兵器の均衡体制ができあがった。この条約も、核を保有しているイスラエルをはじめインド・パキスタンが核実験に成功し朝鮮もこれに続いたことで、非核保有国が核を保有し始め、事実上この核不拡散体制は崩れ始めている。一方核兵器について、最近になってようやくこの不平等条約に代わる核兵器廃絶の動きが進み始めている。しかしこれまで国連は、核拡散防止教育を推進するなど、核の非人道性について世界の市民に教えることを怠ってきたという経緯がある。今回の安保理での朝鮮制裁は、核拡散防止条約から脱退した朝鮮にこの条約の定義する「核非保有国」としての義務を履行していないことをもとにしている。これは朝鮮戦争休戦中の一方の当事者である国連が、その相手である朝鮮に対して行っている外交攻勢であるという解釈が、十分な正当性を持った結果である。それにもかかわらず国際メディアはそのことに触れるのを避けている。結局安保理だけでなく国際社会においては、休戦協定当事者である国連の責任が全く無視されている。南北両政府の斬首作戦は、言うまでもなく休戦協定違反であるし、斬首作戦を含む米韓軍事演習も国際法的には休戦中の非合法な軍事活動である。勿論、朝鮮の核と飛翔体の実験も休戦協定下で進められるべきでない軍事活動ではある。しかし軍事演習と違って戦略核開発という実践には使えない戦略核の実験であるというのが、朝鮮側の言い分である。朝鮮側は米国との直接交渉を要求しているが、これは休戦中にある朝米間の講和への動きとして、正当な要求であることも認めなければならない。
問題はその朝米交渉に備えて、かつて米ソ間でおこなわれたように、相互確実破壊状態のもとでの対等な交渉をしようとしていることである。米国にはソ連となら対等の交渉をしたけれども、朝鮮と対等な交渉をしたくないという問題がひっかかっているのである。プーチン大統領のロシアは、ただ、ゴルバチョフ時代に相互的確破壊戦略を否定したソ連と違って、朝鮮によるこの戦略の採用を支持する、一種の代理戦争をしかけているようにも見える。朝鮮の戦略核部隊は、飛翔体実験成功を祝った時、万歳(マンセイ)三唱ではなく、ロシア式に三回こぶしをふりあがて「フラ、フラ、フラ」と絶叫していた。これは、戦略核部隊のロシアとの9回連呼することで連帯を表していた。一方、米国と朝鮮との間では、いわゆる「弱者の恐喝」関係がなりたっている。つまり米国としては、マッカーサー解任のとき以来の人道的な配慮、つまり朝鮮に対して核攻撃をすると、周辺の韓国はじめ、日本もまきこむことになるので、核兵器の実戦使用ができにくくなっている。朝鮮に対しては、広大な領土を持つソ連のように、まわりのクニグニをまきこまない核攻撃ができない。そう言った朝鮮の小さな領土が、米国の核確実破壊戦略の手を縛っている。結果的に、朝鮮は米国の本土を攻撃できる能力を持った場合、その能力を十二分に振り回すことができるようになるのである。けだし朝鮮の飛翔体実験が成功すると、米国には不利な状態が出てくる。そこにトランプが、マッカーサーの真似をして実戦核戦力を振り回したい気持ちの大前提がある。米合衆国の本土が朝鮮の核破壊範囲内に入る前に、韓国や日本だけを犠牲にできればそれも考慮するに値する。そうしたいという計画が米国のテーブルの上にあることを、トランプ大統領は好んで発言している。トランプ構想が日本を犠牲にすることも辞さないことを理解しないで、全面的に支持している安倍政権の危険な賭けに日本市民が引きずり込まれようとしている。トランプの対朝鮮政策を「狗の遠吠え」呼ばわりする朝鮮の国連代表にも問題があるけれども、その「遠吠え」に朝鮮に近接している日本が同調する「吠え方」には、それ以上の問題がある。日本を犠牲にして、朝鮮を懲らしめてもよいという安倍総理の発言の裏には、英雄的・犠牲的な精神の「大和魂」があるかもしれないが、日本国民にとってはとんでもない安全保障論に付き合わされていることになっている。そのことに気づかないで、核兵器の非人道性をもとにする核兵器廃絶論が理想的に過ぎるという単純思考で、日本列島を沈没させるトランプの核の傘を前提にする安保関連法を支持し、憲法を改悪する現在最も危険な政策をいかにも現実主義的だとすることは、全く朝鮮戦争史を無視し朝鮮戦争再発を容認するもっとも非現実的な発想である。
朝鮮は、朝鮮半島(とその周辺諸国)の非核化を望んでいる。日本の平和市民も同じである。問題は米国がかつて採用していた「核相互確実破壊」戦略を採用しないと、対等な朝米講和会談ができないという思いを金正恩委員長が持っていて、これを朝鮮政府内のタカ派・ハト派が支持している、そういう状態で、どのような落としどころを見つけるか- 結局、核拡散防止条約の二流国扱いすることをやめて、非人道的な核兵器を嫌っている朝鮮と和解することしかない。朝鮮を核戦略での二流国にしておく現状を否定するほかに、朝鮮の核実験、飛翔体実験をやめて休戦条約から平和条約に移行する道はないのである。
その原因となったのは、1957年6月の米国(国連軍)の韓国への核兵器・ミサイル持ち込みを禁止する休戦協定の13節の一方的な廃棄宣言、その後の北侵を目指す米韓合同大演習に対応して朝鮮が2009年に、もはや休戦協定に効力はないとして休戦協定脱退を表明したという、休戦協定が事実上実効性を失ったことにある。その後、韓国側では朝鮮の責任に帰している天安沈没事件、公的にも南北軍事紛争として位置づけられる朝鮮による延坪島砲撃事件などの争乱があった。国連総会では、早くから(1975年)休戦協定を平和条約におきかえて国連軍を解散する決議が採択されている。1996年には国連安保理において議長声明の形で、平和条約が成立するまでの間、休戦協定が十分に順守されるべきことを申し合わせている。その後、休戦協定から平和条約への移行手段として、いわゆる六者会合を重ねることで、米国が朝鮮側からの二国間交渉の提案を無視して来た状態の継続を改善する方向での、第三国あるいは民間レヴェルでの努力が続いている。
これについては、拉致問題の交渉中断状態の克復とともに、朝鮮国内のタカ派・ハト派諸政治勢力のハト派的な合意を進めることを日本が努力を重ねることで、中立監視委員会の機能停止による休戦協定の機能回復を下支えする必要がある。小泉・金正日のピョンヤン協定では、「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際合意を順守すること」が確認され、「核問題及びミサイル問題を安全保障上の諸問題に関して関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性」が確認されている。小泉首相に対して金正日総書記は「ミサイル発射のモラトリウム(一時停止)」の継続を約束し「六か国協議の場でも話合っていく」姿勢を明らかにして、ハッキリと「朝鮮半島の非核化が目標だ」ということを確認した。このように、休戦協定に立ち戻って朝米平和条約への道を準備することについて、日本が調停役を引き受ける道も開かれていた。しかし拉致問題は、帰国した被害者を朝鮮に返す約束を日本が守らず未解決にしたとして平壌合意を無視したまま、これまた日本側にも朝鮮側にもその事実が忘れられている。この問題については金正日総書記もその解決を約束したが、その「解決」が朝鮮国内のタカ派政治勢力の協力を必要としているために、圧力では解決できない、巧妙な交渉を必要としている。これに対して休戦協定の初志に戻ることは、朝鮮国内のタカ派・ハト派の合意が相当程度可能である。なぜなら朝鮮のタカ派もハト派も朝米直接交渉を目指して、核拡散条約を盾とした核特権保有国米国に対して、核を持っても核拡散条約の核非保有国という二流の国家扱いされることに関しての不当性については、完全な見解の一致をみているからだ。
国連安保理では、マッカーサー解任において開いた米国覇権のもとでの核戦略を国際条約に仕立てあげた。それは米ソ両核超大国の核均衡を安定させるために、核保有国が増えないようにするために、核保有国間の軍縮・軍備規制を許しながら、非保有国には絶対に核保有国になることを拒否する、核の保有国と非保有国を分割する不平等な核拡散防止条約を中心にすえた核兵器の均衡体制ができあがった。この条約も、核を保有しているイスラエルをはじめインド・パキスタンが核実験に成功し朝鮮もこれに続いたことで、非核保有国が核を保有し始め、事実上この核不拡散体制は崩れ始めている。一方核兵器について、最近になってようやくこの不平等条約に代わる核兵器廃絶の動きが進み始めている。しかしこれまで国連は、核拡散防止教育を推進するなど、核の非人道性について世界の市民に教えることを怠ってきたという経緯がある。今回の安保理での朝鮮制裁は、核拡散防止条約から脱退した朝鮮にこの条約の定義する「核非保有国」としての義務を履行していないことをもとにしている。これは朝鮮戦争休戦中の一方の当事者である国連が、その相手である朝鮮に対して行っている外交攻勢であるという解釈が、十分な正当性を持った結果である。それにもかかわらず国際メディアはそのことに触れるのを避けている。結局安保理だけでなく国際社会においては、休戦協定当事者である国連の責任が全く無視されている。南北両政府の斬首作戦は、言うまでもなく休戦協定違反であるし、斬首作戦を含む米韓軍事演習も国際法的には休戦中の非合法な軍事活動である。勿論、朝鮮の核と飛翔体の実験も休戦協定下で進められるべきでない軍事活動ではある。しかし軍事演習と違って戦略核開発という実践には使えない戦略核の実験であるというのが、朝鮮側の言い分である。朝鮮側は米国との直接交渉を要求しているが、これは休戦中にある朝米間の講和への動きとして、正当な要求であることも認めなければならない。
問題はその朝米交渉に備えて、かつて米ソ間でおこなわれたように、相互確実破壊状態のもとでの対等な交渉をしようとしていることである。米国にはソ連となら対等の交渉をしたけれども、朝鮮と対等な交渉をしたくないという問題がひっかかっているのである。プーチン大統領のロシアは、ただ、ゴルバチョフ時代に相互的確破壊戦略を否定したソ連と違って、朝鮮によるこの戦略の採用を支持する、一種の代理戦争をしかけているようにも見える。朝鮮の戦略核部隊は、飛翔体実験成功を祝った時、万歳(マンセイ)三唱ではなく、ロシア式に三回こぶしをふりあがて「フラ、フラ、フラ」と絶叫していた。これは、戦略核部隊のロシアとの9回連呼することで連帯を表していた。一方、米国と朝鮮との間では、いわゆる「弱者の恐喝」関係がなりたっている。つまり米国としては、マッカーサー解任のとき以来の人道的な配慮、つまり朝鮮に対して核攻撃をすると、周辺の韓国はじめ、日本もまきこむことになるので、核兵器の実戦使用ができにくくなっている。朝鮮に対しては、広大な領土を持つソ連のように、まわりのクニグニをまきこまない核攻撃ができない。そう言った朝鮮の小さな領土が、米国の核確実破壊戦略の手を縛っている。結果的に、朝鮮は米国の本土を攻撃できる能力を持った場合、その能力を十二分に振り回すことができるようになるのである。けだし朝鮮の飛翔体実験が成功すると、米国には不利な状態が出てくる。そこにトランプが、マッカーサーの真似をして実戦核戦力を振り回したい気持ちの大前提がある。米合衆国の本土が朝鮮の核破壊範囲内に入る前に、韓国や日本だけを犠牲にできればそれも考慮するに値する。そうしたいという計画が米国のテーブルの上にあることを、トランプ大統領は好んで発言している。トランプ構想が日本を犠牲にすることも辞さないことを理解しないで、全面的に支持している安倍政権の危険な賭けに日本市民が引きずり込まれようとしている。トランプの対朝鮮政策を「狗の遠吠え」呼ばわりする朝鮮の国連代表にも問題があるけれども、その「遠吠え」に朝鮮に近接している日本が同調する「吠え方」には、それ以上の問題がある。日本を犠牲にして、朝鮮を懲らしめてもよいという安倍総理の発言の裏には、英雄的・犠牲的な精神の「大和魂」があるかもしれないが、日本国民にとってはとんでもない安全保障論に付き合わされていることになっている。そのことに気づかないで、核兵器の非人道性をもとにする核兵器廃絶論が理想的に過ぎるという単純思考で、日本列島を沈没させるトランプの核の傘を前提にする安保関連法を支持し、憲法を改悪する現在最も危険な政策をいかにも現実主義的だとすることは、全く朝鮮戦争史を無視し朝鮮戦争再発を容認するもっとも非現実的な発想である。
朝鮮は、朝鮮半島(とその周辺諸国)の非核化を望んでいる。日本の平和市民も同じである。問題は米国がかつて採用していた「核相互確実破壊」戦略を採用しないと、対等な朝米講和会談ができないという思いを金正恩委員長が持っていて、これを朝鮮政府内のタカ派・ハト派が支持している、そういう状態で、どのような落としどころを見つけるか- 結局、核拡散防止条約の二流国扱いすることをやめて、非人道的な核兵器を嫌っている朝鮮と和解することしかない。朝鮮を核戦略での二流国にしておく現状を否定するほかに、朝鮮の核実験、飛翔体実験をやめて休戦条約から平和条約に移行する道はないのである。
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